目次
霊柩運送業許可とは?霊柩車で運送業を始める方法を行政書士が解説
一般貨物許可との違いをわかりやすく解説します
横山輝明です。運送業許可を専門とする行政書士として活動していますが、霊柩車(霊きゅう自動車)を使った搬送は、人の尊厳を守る大切な仕事であると同時に、法律上は一般貨物自動車運送事業の許可制度の中に位置づけられています。ただ、通常の一般貨物運送とは要件がいくつか異なる部分があり、葬祭業から新規に参入したい方が調べていくうちに混乱してしまうケースもあります。この記事では、霊柩車で事業を始める際に知っておきたい許可制度の基本をまとめました。
霊柩運送も「一般貨物自動車運送事業」の許可が必要
霊柩車での搬送について、搬送の対価を受けて事業として行う場合には、一般貨物自動車運送事業の許可が必要となります。国土交通省の事業区分上、霊柩運送は一般貨物自動車運送事業の中の「霊きゅう限定」という位置づけで扱われています。
ポイント:霊柩運送事業は一般貨物自動車運送事業であり、営業用自動車(緑ナンバー)としての取得が必要です。搬送の対価を受けて事業として行う場合には、この許可が必要です。
通常の一般貨物許可と異なる点
通常の一般貨物自動車運送事業の許可では、営業所ごとに車両5台以上を確保することが原則の要件になっています。一方、霊きゅう限定の許可については、この最低車両台数の要件に拘束されないという取り扱いがされています。これは「1台であれば必ず許可が取れる」ということではなく、「5台という車両台数要件がそのまま適用されるわけではない」という趣旨です。具体的な車両台数の取り扱いは、運輸支局ごとの運用によって異なる場合があるため、事前の確認が必要です。
一方で、営業所・車庫・休憩施設の確保、資金計画、法令遵守体制の構築といった基本的な要件は、通常の一般貨物運送と同様に求められます。「霊柩だから特別に簡単」というわけではなく、「車両台数の要件の適用が異なる」と理解しておくのが正確です。
葬祭業から新規参入する際に気をつけたいこと
葬儀会社が自社で搬送業務まで担いたいと考えて、霊柩車の導入を検討するケースは少なくありません。ただ、車両を購入すればすぐに搬送業務を始められるわけではなく、許可を取得してからでないと、対価を受けての搬送はできません。
- 営業所・車庫として使う物件が、運送業の要件を満たしているか
- 営業所の規模や事業内容に応じて、運行管理者・整備管理者の選任義務が生じること
- 資金計画が、事業規模に見合ったものになっているか
特に、既存の葬儀会館や事務所をそのまま営業所として使えるかどうかは、事前に確認しておきたいポイントです。
既存の運送業者が霊柩事業を追加する場合
すでに一般貨物自動車運送事業の許可を持っている事業者が、新たに霊柩運送を始めたいというケースもあります。この場合、一般貨物自動車運送事業として霊きゅう運送を行うための事業計画変更等の手続が必要になる場合があります。既存の車両・営業所をそのまま使えるかどうかは、車両の構造要件(霊柩車としての設備)などによって変わってくるため、個別に確認が必要です。
睡眠施設・車庫の距離・資金の要件も確認しておきたい
霊柩運送に限らず、一般貨物自動車運送事業の許可では、いくつか具体的な数値基準を伴う要件があります。霊柩運送を検討する際も、あわせて確認しておきたい点です。
まず睡眠施設についてです。運転者や運行管理者などが、勤務の中で睡眠や仮眠を取る必要がある場合、睡眠施設の設置が必要になります。この施設には広さの基準があり、同時に睡眠を取る乗務員1人あたり2.5平方メートル以上が必要とされています。
次に、営業所と車庫の距離です。営業所・休憩施設と車庫が離れている場合、その距離には基準が設けられていますが、この基準は全国共通ではなく、地方運輸局ごとの処理方針によって異なります。地域によって基準となる距離が違うため、営業所・車庫の候補地を検討する際は、管轄の運輸局の基準を個別に確認する必要があります。
最後に、資金面の要件です。許可申請では、所要資金の全額を確保していることを示す自己資金の残高証明書が必要になりますが、これは申請日時点だけでなく、処分(許可)までの適宜の時点にも改めて提出を求められることがあります。一時的に資金を用意しただけでは審査を通過できない仕組みになっているため、資金計画は早い段階からしっかり立てておく必要があります。提出のタイミングは運輸局によって多少異なるため、管轄運輸局の指示に従って進めることが大切です。
ポイント:睡眠施設の広さ、営業所〜車庫間の距離、資金証明のタイミングは、いずれも細かい基準が絡む部分です。地域や運輸局によって運用が異なることもあるため、思い込みで進めず、事前に確認しながら準備することをお勧めします。
現場経験28年からのチェックポイント
水道工事・古紙回収・危険物輸送と、いろいろな現場を見てきた立場から言うと、霊柩運送は「特殊だから簡単」と誤解されやすい分野です。実際には、車両台数の要件が通常と異なる以外は、運行管理・法令遵守が同じように求められます。搬送の性質上、時間の制約が厳しい仕事でもあるので、許可を取る段階から、運行管理の体制をしっかり組んでおくことが大切だと感じています。
よくある質問
- Q. 霊柩車1台だけでも許可は取れますか?
A. 霊きゅう限定の許可では、通常の車両5台以上という要件には拘束されないとされていますが、具体的な取り扱いは運輸支局への確認が必要です。 - Q. 葬儀会社が自社の車で搬送するだけでも許可が必要ですか?
A. 搬送の対価を受けて事業として行う場合には、一般貨物自動車運送事業の許可が必要となります。 - Q. 既存の運送業許可に霊柩事業を追加できますか?
A. 事業計画の変更等の手続が必要になる場合があります。車両の構造要件なども個別に確認する必要があります。 - Q. 営業所と車庫の距離は決まっていますか?
A. 距離の基準は地方運輸局ごとの処理方針によって異なります。管轄の運輸局に個別に確認する必要があります。
霊柩運送は、一般貨物自動車運送事業の中でも独自の位置づけを持つ分野です。車両台数の要件は通常と異なるものの、それ以外の基本的な要件は通常の運送業と同様に求められます。新規参入を検討している場合は、早い段階から専門家に相談し、要件を一つずつ確認していくことをお勧めします。
参考資料
国土交通省「標準霊きゅう運送約款」
https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001881520.pdf
国土交通省「標準運送約款」
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk4_000009.html
関東運輸局「トラック事業を始めるには」
https://wwwtb.mlit.go.jp/kanto/jidou_koutu/kamotu/kamotu_jigyoukaisi/index.html


