INHERITANCE & SUCCESSION
運送業許可は相続できる?
承継認可の手続き・60日ルールと
事業承継3択を行政書士が解説【2026年版】
横山輝明です。
「親父が急に亡くなって、トラックをどうすればいいか分からない」――運送業の許可を調べていると、こういう状況に直面している方がいることに気づきます。
個人事業主として運送業許可を持っていた経営者が亡くなった場合、その許可が自動的に相続人へ引き継がれるわけではありません。事業を続ける相続人は、死亡後60日以内に相続認可の手続きを進める必要があります。期限を過ぎると相続認可を受けられないため、早急な対応が必要です。
この記事では、許可の相続手続き(承継認可)から、その先の事業承継の選択肢まで、現場28年・行政書士の視点でまとめました。
📋 目次
運送業許可と「相続」の基本的な考え方
一般貨物自動車運送事業の許可(いわゆる緑ナンバー)は、行政が「この人に」与えるものです。財産のように当然に引き継がれるわけではありません。
ただし、貨物自動車運送事業法には「相続人が事業を引き継げる制度」が用意されています。それが「承継認可」です。
この制度を使えば、相続人が運輸局の認可を得ることで、被相続人(亡くなった経営者)の許可に基づく権利義務をそのまま承継できます。新たにゼロから許可を取り直す必要はありません。
個人事業主と法人では扱いがまったく違う
まず、ここが一番大事な分岐点です。
| 区分 | 経営者が亡くなったら | 必要な手続き |
|---|---|---|
| 個人事業主 | 許可は当然には引き継がれない | 死亡後60日以内に相続認可の手続き |
| 法人(株式会社等) | 許可は法人に残る | 役員変更届等(別手続き) |
法人の場合、許可は「会社」に対して出ているため、代表者が亡くなっても許可自体は会社に残ります。ただし代表者変更の届出など、別途必要な手続きはあります。
問題になりやすいのは個人事業主のケースです。法人化せずにひとりで許可を持っていた経営者が亡くなると、時間との勝負になります。
承継認可の申請手順と60日ルール
⚠️ 60日ルール
貨物自動車運送事業法第31条では、相続人が事業を引き続き経営しようとするときは、被相続人の死亡後60日以内に国土交通大臣の認可を受けなければならないと定めています。実務上は、期限を過ぎる前に管轄運輸支局へ申請書を提出し、直ちに審査へ進める必要があります。
60日というのは、葬儀・四十九日・遺産の把握をしながら動く期間としては、正直あまり余裕がありません。経営者が高齢になったら、生前のうちから準備しておくことが、事業を止めない一番の対策になります。
申請してから認可が出るまでの間は?
相続人が認可申請をした場合、被相続人の死亡の日から認可または不認可の通知を受ける日まで、従前の許可は相続人に対してされたものとみなされます。そのため、適法に申請した場合は、審査中も事業を継続できます。
認可を受けた相続人は、被相続人の許可に基づく権利義務をすべて承継します。
必要書類と提出先
必要書類は管轄の運輸支局によって異なる場合があります。以下は一般的な例として参考にしてください。必ず管轄の運輸支局に事前確認することを推奨します。
- 📄 一般貨物自動車運送事業の経営の相続認可申請書
- 📄 被相続人の死亡と相続関係を確認できる戸籍・除籍謄本等
- 📄 相続関係を証明する書類(戸籍謄本等)
- 📄 他の相続人の同意書(相続人が複数いる場合)
- 📄 欠格事由に該当しない旨の宣誓書
- 📄 その他、管轄運輸支局が求める書類
提出先:被相続人の主たる事務所の所在地を管轄する地方運輸局(または運輸支局)
法令試験にも注意
相続認可申請では、申請者本人が法令試験の対象になります。再試験を含めても合格できない場合、申請が認められない可能性があります。60日の期限だけでなく、試験準備も同時に進める必要があります。
その先の事業承継|親族・社員・M&Aの3択
承継認可で「許可を引き継ぐ」のはあくまでスタートラインです。その後、会社(事業)をどう継続させるかは別の話になります。
運送業の事業承継には、大きく分けて親族内承継、社員承継、第三者へのM&Aという3つの選択肢があります。どの方法を選ぶ場合でも、許認可、株式、車両、借入、雇用、荷主との契約をまとめて整理する必要があります。
| 方法 | 許可の扱い | メリット | 注意点 |
|---|---|---|---|
| ①親族内承継 | 承継認可 or 株式承継 | 理念・取引先を引き継ぎやすい | 後継者育成と関係者への引継ぎに時間が必要 |
| ②社員承継 | 株式承継(MBO等) | 現場を知る人材が引き継ぐ | 買取資金の調達が課題 |
| ③M&A | 株式譲渡なら許可名義は法人のまま | 後継者不在でも事業継続・売却益 | 買い手探しと企業価値整理が必要 |
M&Aの場合、許可はどうなる?
株式譲渡によるM&Aでは、許可を持つ法人そのものは変わりません。そのため、許可の「承継」が起きるわけではなく、通常は相続認可や譲渡譲受認可の対象にはなりません。ただし、代表者や役員等に変更がある場合は、所定の変更届などが必要です。
一方、事業譲渡では譲渡譲受の認可、会社の合併や分割ではそれぞれ合併・分割の認可が問題になります。手続きは取引の形によって異なります。詳しくは運送業許可は譲渡できるのかの記事もご参照ください。
事業承継税制(特例措置)|令和9年12月末まで
法人の親族内承継・社員承継で非上場株式を移転する場合、法人版事業承継税制(特例措置)を利用できる可能性があります。一定の要件を満たすと、後継者が株式を贈与・相続で取得した際の贈与税・相続税について、納税猶予や免除を受けられる制度です。
📅 期限に注意
- 特例承継計画の提出期限:令和9年9月30日
- 贈与・相続の実施期限:令和9年12月31日
- 中小企業基本法の対象業種であれば運送業も対象
この制度は法人の株式承継を対象とするため、個人事業主の運送業許可の相続とは別に検討する必要があります。活用を考える場合は、認定経営革新等支援機関や税理士へ早めに相談してください。行政書士は、運送業許可の相続・変更など許認可手続きの部分を支援します。
現場28年チェックポイント
🔧 横山輝明|現場経験28年からのひとこと
水道工事・古紙回収・危険物輸送と28年やってきて思うのは、事業の引き継ぎは「書類の話」だけじゃないということです。
荷主との関係、ドライバーの人間関係、車両の整備状況、ルートの暗黙知――こういうものが承継できるかどうかが、実は事業継続の本質だったりします。
許可の手続きは60日以内で動けばなんとかなる。でも事業そのものの継続は、日頃から後継者と現場を共有できているかどうかにかかっています。
よくある質問
Q. 個人事業主の許可を持つ父が亡くなりました。まず何をすればいいですか?
A. まず管轄の運輸支局に連絡し、承継認可申請に必要な書類を確認してください。申請期限は死亡の日から60日以内です。並行して相続人の確認・同意取りも進める必要があります。
Q. 申請中もトラックは動かせますか?
A. 相続認可の申請をした場合、死亡の日から認可・不認可の通知を受ける日まで、従前の許可は相続人に対してされたものとみなされます。そのため、適法に申請していれば審査中も事業を継続できます。
Q. 相続人が複数いる場合はどうなりますか?
A. 事業を引き継ぐ相続人以外から同意書を得る必要があります。家族間で話し合いが整わないと60日以内の手続きに支障が出ることがあるため、早めに動くことが重要です。
Q. 法人化していれば、こうした問題は起きませんか?
A. 法人の場合、許可は会社に残るため個人事業主のような60日問題は生じません。ただし代表者変更届など別の手続きが必要になるケースがあります。
Q. M&Aで会社を売った場合、許可はどうなりますか?
A. 株式譲渡の場合は許可を持つ法人自体が変わらないため、通常は許可承継の認可は不要です。ただし役員等の変更届が必要になることがあります。事業譲渡では譲渡譲受認可、合併・会社分割ではそれぞれ合併・分割の認可を確認します。
📌 まとめ
- 個人事業主の運送業許可は、経営者の死亡で自動承継されない
- 死亡後60日以内に承継認可申請が必要
- 申請中は従前の許可が有効とみなされる(事業継続可能)
- 法人の場合は許可は会社に残るが、代表者変更届等は別途必要
- 事業承継は親族・社員・M&Aの3択で早期に方針を決める
- 株式譲渡では許可名義の法人は変わらない。事業譲渡・合併・分割は別途認可を確認する
- 事業承継税制(特例措置)は令和9年12月末まで
📝 noteマネーピックアップ 13回掲載
運送業・物流分野の情報発信を続けています。
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運送業許可の承継・相続について、
個別の状況に応じてご相談を承っています。
参考資料
e-Gov法令検索「貨物自動車運送事業法」
https://laws.e-gov.go.jp/law/401AC0000000083
近畿運輸局「事業承継される方へ」(参考例)
https://wwwtb.mlit.go.jp/kinki/00001_03128.html
全日本トラック協会「中小トラック運送事業者のための事業承継ハンドブック」
※本記事は2026年7月時点の情報に基づき作成しています。必要書類・手続きの詳細は管轄の運輸支局によって異なる場合があります。個別の状況については、必ず管轄の運輸支局または専門家にご確認ください。

