横山輝明です。
28年、現場にいました。水道工事の作業員として雨の日は朝から電話一本で「今日は休み」と言われる日給月給の生活。古紙回収でルートを回り続けた8年。危険物を積んで高速を走った7年。
そういう現場の空気を知っているから、「許可を取りたいけど何から手をつければいいかわからない」という人の気持ちは、わりとリアルにわかります。
この記事では、一般貨物自動車運送事業許可(いわゆる「運送業許可」「緑ナンバー許可」)の申請方法を、要件から流れ・費用・期間まで一気に解説します。専門用語はできるだけ噛み砕いて書きます。
私は28年間、実際に荷物を積み、配送先へ向かい、現場で働いてきました。だからこそ、許可を取ること自体が目的ではなく、「許可を取ったあとに仕事が回るか」という視点でお手伝いしています。
📋 この記事の目次
1. 運送業許可とは?必要なケース・不要なケース
一言で言うと、「他人から運賃をもらってトラックで荷物を運ぶ」ための国の許可です。国土交通大臣から与えられる行政処分で、個人・法人どちらでも申請できます。
よく「緑ナンバー」「青ナンバー」「営業ナンバー」と呼ばれるのもこれです。
✅ 許可が必要なケース
- 取引先の荷物を運賃もらって運ぶ
- グループ会社の荷物を有償で運ぶ
- 引越し業を始める
- 積載車で他社の自動車を運ぶ
- 霊柩車でご遺体を運ぶ
❌ 許可が不要なケース
- 自社の荷物だけを自社トラックで運ぶ
- 運賃をもらわずに荷物を運ぶ
- 軽自動車や125cc超バイクで運ぶ(別途届出)
⚠️ 「運賃という名目でなければOK」は通じません
請求書に「運賃」と書かなくても、実質的に荷物を運んだ対価をもらっていれば許可が必要です。建設業者が元請の資材を運ぶケースで「人工代」に含まれている場合も同様とされることがあります。個別の判断が必要な場合は、専門家に確認することをおすすめします。
2. 申請に必要な5つの要件
運送業許可の申請は、次の5つの要件をすべて同時に満たす必要があります。一つでも欠ければ申請は受理されません。
① 資金(自己資金の証明)
一番ハードルが高いのがここです。2019年の法改正で必要資金が約2倍になりました。
目安として1,500万〜2,500万円程度となるケースが多いですが、必要額は事業計画や車両構成などによって異なります。
内訳は、役員報酬6ヶ月分・従業員給与6ヶ月分・車両修繕費6ヶ月分・リースローン12ヶ月分・賃料12ヶ月分などを合算して個別に計算します。銀行の残高証明書で証明します。
② 人(必要な人員の確保)
一般的には、運転者5名分の体制に加え、運行管理者・整備管理者の選任が必要になります。事業規模や兼任関係によって状況は異なるため、個別に確認が必要です。
- 運転者(ドライバー):5人
- 運行管理者:1人(ドライバーとの兼任不可)
- 整備管理者:1人(ドライバー・運行管理者との兼任可)
一般貨物自動車運送事業では、必要な運転者や管理者の体制を確保する必要があるため、個人事業主が一人だけで始めることは現実的には困難です。人員の確保が現在最大の難関になっています。
③ 資格(運行管理者・整備管理者)
運行管理者資格は国家試験への合格が必要です。現在はCBT方式(パソコン受験)で、試験期間内に日時を選んで受験します。
整備管理者は自動車整備士3級以上の資格、または2年以上の実務経験+選任前研修で対応できます。申請前から計画的に動く必要があります。
④ 場所(営業所・車庫の要件)
営業所と車庫はどちらも要件が細かく、ここで詰まるケースが非常に多いです。
主な確認ポイント:
- 市街化調整区域では、原則として要件を満たす必要があり、個別の確認が必要です
- 第1・2種低層住居専用地域・中高層住居専用地域では使用できない場合があります(例外あり)
- 農地法・建築基準法に違反した建物でないこと
- 車庫前面道路は車両制限令などに適合する必要があります
- 営業所から車庫までの距離は、管轄運輸局ごとに基準が定められています
⑤ 車両(トラック5台以上)
最低5台の事業用車両が必要です。売買契約書などにより導入予定が確認できる場合は、申請時点で手元になくても対応できることがあります。
- 車検証の用途欄が「貨物」であること
- 申請者が車検証上の使用者になること
- トラクタ+トレーラーは合わせて1台と数える
- 軽自動車は対象外(別制度・黒ナンバー)
3. 申請から開業までの流れ
全体の流れを把握してから動き出す人と、動きながら把握しようとする人では、取得までの期間が大きく変わります。先に全体像を頭に入れてください。
要件整備・書類作成
5要件をすべてクリアし、申請書と添付書類を揃える。ここが一番時間のかかる工程。
地方運輸支局へ申請書提出
営業所を管轄する地方運輸支局の窓口に提出。受付後、審査が始まる。
役員法令試験の受験
申請受付後最初の奇数月に地方運輸局で実施。法人は常勤役員1名・個人は本人が受験。所定回数合格できない場合は申請継続ができなくなるため、計画的な対策が必要。
審査・補正対応
地方運輸支局→地方運輸局で審査。書類に不備があれば補正指示が来る。標準処理期間は4〜5か月。
許可取得・登録免許税の納付
審査通過で許可書が交付される。登録免許税12万円を1か月以内に金融機関で納付。
各種届出・緑ナンバーへの変更
運行管理者・整備管理者の選任届、社会保険・労働保険の加入、36協定の提出。運輸開始前確認が受理されると「連絡書」が交付され緑ナンバーに変更できる。
運輸開始届・運賃料金設定届の提出 → 開業
許可取得後、法令で定められた期限内に運輸開始届などの手続きが必要。期限を過ぎると許可が失効するため注意。
巡回指導(開業後3か月目安)
開業後おおむね3か月程度を目安に、適正化事業実施機関(各地のトラック協会)による巡回指導が行われることがあります。日報・点呼簿・運転記録などが確認されます。
4. 費用と期間の目安
| 項目 | 金額・期間 | 備考 |
|---|---|---|
| 登録免許税(法定費用) | 12万円 | 許可取得後1か月以内に納付 |
| 行政書士報酬 | 事務所により異なる | 事前にご確認ください |
| 自己資金(証明が必要な額) | 1,500万〜2,500万円以上 | 車両・施設内容による |
| 審査期間(標準) | 4〜5か月 | 地域・時期により変動 |
| 申請準備〜開業まで(目安) | 6か月〜1年程度 | 準備の進み具合による |
5. 一般貨物と軽貨物の違い
「黒ナンバーと緑ナンバーの違いがよくわからない」という方は多いです。簡単に整理します。
| 項目 | 一般貨物(緑ナンバー) | 軽貨物(黒ナンバー) |
|---|---|---|
| 使用車両 | 普通・大型トラック | 軽自動車・125cc超バイク |
| 手続き | 許可制(4〜5か月) | 届出制(比較的短期) |
| 最低車両台数 | 5台以上 | 1台から可 |
| 運行管理者 | 選任が必要 | 不要 |
| 自己資金要件 | 1,500万円〜 | なし |
大型・中型トラックで事業を始めたい場合は一般貨物の許可が必要です。軽バンやバイクのみで始める場合は軽貨物の届出で対応できます。どちらか判断に迷う場合はご相談ください。
6. 許可取得後に必要な手続き
許可が下りても、それだけでは営業できません。許可取得後にも一連の手続きがあります。
📋 運行管理者・整備管理者の選任届
選任した管理者を運輸支局に登録する手続き。資格証や実務経験証明書が必要。
📋 社会保険・労働保険の加入
役員・従業員の状況に応じて加入。36協定書の労働基準監督署への提出も必要。
📋 運輸開始前確認の提出
この書類が受理されないと、緑ナンバー取得に必要な連絡書が発行されない。
📋 運輸開始届・運賃料金設定届
許可取得から1年以内に提出。期限超過で許可が失効する。
⚠️ 開業後3か月以内に巡回指導があります
開業後おおむね3か月程度を目安に各地のトラック協会が来訪し、日報・点呼簿・運転記録などを確認することがあります。開業と同時に帳票管理の体制を整えておくことが必要です。
7. 現場28年が見てきた「落とし穴」
申請でつまずく人に共通しているパターンがあります。
🚛 落とし穴① 車庫前の道路を「なんとなく」で決める
「見た感じ広そう」は通じません。道路幅は車両制限令などへの適合が必要で、物件資料の数字はあてになりません。契約する前に専門家に調べてもらうことをすすめます。
🚛 落とし穴② 用途地域の確認を後回しにする
市街化調整区域や住居専用地域では、営業所・休憩室の設置に制限がかかる場合があります。「安い物件を見つけた」と喜んで契約したら要件を満たさなかった、というケースがあります。契約前に都市計画課で確認する習慣を持ってください。
🚛 落とし穴③ 役員法令試験を甘く見る
2回不合格で申請取り下げです。「なんとかなる」と思って無勉強で受けに行く人がいますが、なんとかなりません。試験対策はしっかりやってください。
🚛 落とし穴④ 「人がいない」を後回しにする
以前は資金が最大の壁でしたが、今は人材確保がそれ以上の難関になっています。ドライバー確保と運行管理者の選任は、申請前から並行して動き始めてください。
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8. よくある質問
Q. 自己資金はいくら必要ですか?
目安は1,500万〜2,500万円以上です。車両台数・新車中古車の別・事務所や車庫の賃料によって大きく変わります。まず事業計画の概要をまとめてから相談するとスムーズです。
Q. 法人口座でないとダメですか?
残高証明書は、個人事業主であれば個人名義の口座で対応できます。法人の場合は法人口座での証明が求められます。詳細は管轄運輸支局または専門家にご確認ください。
Q. 役員法令試験は難しいですか?
きちんと対策をすれば合格できる試験です。ただし2回不合格で申請が取り下げになります。参考書や問題集を使って計画的に準備してください。
Q. 営業所は自宅でもできますか?
用途地域・建物の構造・使用権限などの要件を満たせば自宅を営業所にできる場合があります。ただし市街化調整区域や住居専用地域では制限がかかることがあるため、事前に確認が必要です。
Q. 車庫だけ借りても大丈夫ですか?
車庫の使用権限(賃貸借契約書など)を証明できれば、自己所有でなくても対応できます。ただし前面道路の要件・営業所との距離・用途地域などの条件もあわせて確認が必要です。
Q. 個人事業主でも運送業許可は取れますか?
取れます。ただし個人1人では申請できません。ドライバー5名と運行管理者の確保が必要な点は法人と変わりません。
Q. 許可申請は自分でもできますか?
法律上は可能です。ただし、書類の種類・要件の細かさ・補正対応などを含めると相応の時間と労力がかかります。本業の準備と並行して進める場合は、専門家への依頼も検討してください。
まとめ
運送業許可申請で押さえるべき5つのポイント
- 「他人の荷物を運賃もらって運ぶ」なら許可が必要
- 5要件(資金・人・資格・場所・車両)をすべて同時にクリア
- 自己資金の目安は1,500万〜2,500万円以上
- 審査期間は4〜5か月、開業まで含めると6か月〜1年は見ておく
- 車庫前道路・用途地域・法令試験は早めに手を打つ
物流は経済の血液です。許可を取って事業を始めることは、社会を動かすことに直接つながっています。ただ、準備を怠ると時間もお金も無駄になります。早い段階で専門家に相談しながら進めてください。
こんな方は早めのご相談をおすすめします
- ✅ 車庫が要件を満たすか不安
- ✅ 自己資金が足りるか知りたい
- ✅ 役員法令試験の対策が心配
- ✅ 人員が足りるかわからない
- ✅ 何から始めればいいか整理したい
初回相談で方向性を整理します。お気軽にどうぞ。
※本記事は2026年7月時点の法令・公表情報をもとに作成しています。制度改正や個別事情によって取扱いが異なる場合がありますので、具体的な案件は管轄運輸支局または専門家へご相談ください。
著者:横山輝明(行政書士あおばと合同事務所 代表)
水道工事13年・古紙回収8年・危険物輸送7年の現場経験を持つ運送業専門行政書士。東京都行政書士会登録(第26081402号)。運送業許可・変更届は関東エリア対応、巡回指導対策・コンサルティングはオンラインで全国対応。

