- 役員法令試験とは何か・誰が受けるのか
- 試験の形式・合格ライン・全13法令の出題範囲
- 関東運輸局(神奈川エリア)の合格率・試験日程と会場
- 2回不合格になるとどうなるか・再申請はできるか
- 「当日条文集で何とかなる」がなぜNGか
- 合格するための勉強方法と時間の目安
「試験に落ちたら、許可はどうなるんだろう……」
神奈川・横浜・川崎エリアで運送業の許可申請を進めていると、必ずこの壁にぶつかります。役員法令試験です。
「試験」と聞くだけで体が固まる方もいますよね。わかります。でもこの試験、仕組みをちゃんと理解して準備すれば、それほど恐れるものではありません。
逆に、「なんとかなるだろう」と甘く見て落ちると、許可が大幅に遅れます。2回続けて不合格になると、申請のやり直しになる可能性があります。それが一番怖い。
この記事では、役員法令試験の仕組みから勉強方法まで、現場経験28年の行政書士がわかりやすくお伝えします。
役員法令試験とは?なぜ必要なのか
一般貨物自動車運送事業の許可を取るには、「申請者(または法人の役員)が、運送業に必要な法令知識を持っていること」が求められます。その確認のために行われるのが役員法令試験です。
「社長、ちゃんと法律わかってますか?」という国のチェックです。許可申請のプロセスの中で、これに合格しないと許可は下りません。
- 法人の場合:登記されている常勤役員のうち1名(非常勤役員は受験不可)
- 個人事業主の場合:事業主本人のみ
- 全役員が受ける必要はなく、1名が合格すればOK
登記されている「常勤」役員に限られる点は注意が必要です。名ばかり役員や非常勤の方は受験できません。
試験の形式・合格ライン・出題範囲
| 問題数 | 30問 |
|---|---|
| 形式 | ○×方式・語群選択方式 |
| 合格ライン | 30問中24問以上正解(正答率80%) |
| 間違えられる数 | 最大6問まで |
| 試験時間 | 50分(1問あたり約1分40秒) |
| 持ち込み | 試験会場で配られる条文集のみ可(自分の資料・スマホ等は不可) |
| 合格発表 | 試験から約1週間後、郵送で通知 |
「80%正解」はなかなかシビアな基準です。30問中6問しか間違えられない。そして試験時間は50分、1問あたり約1分40秒しかありません。
出題範囲(全13法令)
- ① 貨物自動車運送事業法
- ② 貨物自動車運送事業法施行規則
- ③ 貨物自動車運送事業輸送安全規則
- ④ 貨物自動車運送事業報告規則
- ⑤ 自動車事故報告規則
- ⑥ 道路運送法
- ⑦ 道路運送車両法
- ⑧ 道路交通法
- ⑨ 労働基準法
- ⑩ 自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)
- ⑪ 労働安全衛生法
- ⑫ 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)
- ⑬ 下請代金支払遅延等防止法(下請法)
※法令試験は、実施日において施行されている最新の法令から出題されます。特に⑫⑬の経済法令(独占禁止法・下請法)は対策が手薄になりがちですが、コンプライアンス重視の観点から関東運輸局でも毎回必ず出題される重要ポイントです。
運行管理者試験(貨物)の勉強をしたことがある方は有利です。①②③⑦⑨⑩など、出題範囲が重なる法令が多いため、知識のベースとして活かせます。
役員法令試験の合格率は?
関東運輸局管内の直近の合格率は以下のとおりです。
| 実施月 | 合格者/受験者 | 合格率 |
|---|---|---|
| 令和7年1月 | 43人/86人 | 50.00% |
| 令和7年3月 | 50人/73人 | 68.49% |
| 令和7年5月 | 62人/83人 | 74.70% |
| 令和7年7月 | 47人/81人 | 58.02% |
| 令和7年9月 | 40人/77人 | 51.95% |
| 令和7年11月 | 45人/89人 | 50.56% |
| 令和8年1月 | 95人/119人 | 79.83% |
| 令和8年3月 | 75人/115人 | 65.22% |
出典:関東運輸局「法令試験の実施について」
最も低い月は50.00%、最も高い月でも79.83%です。回によって合格率が30ポイント近く変動することがわかります。「運が良ければ受かる」という試験ではなく、どの回に当たっても通用する準備が必要です。
約半数が落ちる回もある試験に、たった2回のチャンスで合格しなければ事業計画が頓挫しかねない。これが役員法令試験の現実です。「最初は舐めてかかって1回目に落ちてしまった。2回目は絶対に受からないといけない」という状況に追い込まれる方が毎年います。
関東運輸局(神奈川エリア)の試験日程と会場
| 実施時期 | 原則、奇数月(1・3・5・7・9・11月)に実施 |
|---|---|
| 試験会場 | 横浜市中区の関東運輸局(横浜第二合同庁舎1階 共用会議室) ※会場は変更になる場合があります |
| 申請との関係 | 申請受理後の翌月以降、最初の奇数月に実施 |
| 通知 | 試験日の約10日前に「法令試験実施通知書」が郵送される |
| 注意点 | 各都道府県の運輸支局では試験を行わない |
※日程・会場は変更される場合があります。必ず関東運輸局の公式ページ(法令試験の実施について)で最新情報をご確認ください。
月の初めに申請すると当月末が試験日になることもあります。申請から試験まで準備期間が短くなるケースがあるので、申請前から勉強を始めておくことをおすすめします。
2回不合格になるとどうなる?
1回落ちると、次の試験は2か月後(次の奇数月)になります。その間、許可申請は止まったままです。
1つの申請につき受験できるのは原則2回までです。一般的には、2回連続で不合格となった場合、運輸局から申請の取り下げを求められる運用となっています。取り下げをしなければ却下処分となり、申請書も返却されません。通常はその申請での許可取得が難しくなります。
- 申請取り下げ後、最初から許可申請をやり直し
- 最初の申請からトータルで半年以上のロスになるケースも
- その間も営業所・車庫の家賃は発生し続ける
- 準備費用がかさんで自己資金(残高)が減り、再申請時に資金要件を満たせなくなるリスクもある
「2回落ちたら未来永劫ダメ」ではない
誤解している方もいますが、2回不合格になっても、運送業の許可申請ができなくなるわけではありません。申請を取り下げた後に改めて最初から申請し直せば、再び受験のチャンスは得られます。一定期間の申請禁止といったペナルティもありません。
ただし、やり直しによる時間・費用・資金のロスは現実として大きいです。与えられた2回のチャンスで必ず合格するという意識で臨むことが重要です。
「条文集があるから何とかなる」は絶対NG
よくある誤解があります。「試験当日に条文集が配られるんだから、その場で調べれば大丈夫でしょ」という考え方です。
これは絶対にやめてください。
試験時間は50分、問題数は30問。1問あたり約1分40秒しかありません。条文集はかなりの分量があります。初めて見るような分厚い冊子の中から、全設問の該当箇所を探し出して内容を判断していたら、時間は全く足りなくなります。
条文集は「知っている内容を確認する」ためのツールです。「知らないことを調べる」ためのものではありません。事前に過去問演習を通じて、「この問題はあのあたりに書いてある」という感覚を身につけておくことが、時間内に解き切るための鍵です。章・条・項・号・見出しといった法律の基本構造を理解したうえで、引き方を練習してください。
現在は、労働時間や休息期間に関する「改正改善基準告示」が完全に適用された状態で試験が出題されます。古い過去問や古い条文集の解説で数字を覚えてしまうと、本番で数字の引っかけ問題に対応できず失点する原因になります。必ず最新の法改正に対応した条文集と問題集を使って対策してください。
何時間くらい勉強すればいい?
「何時間勉強すれば合格できますか?」はよくある質問ですが、正直なところ個人差が大きく、一概には言えません。
勉強時間の目安(あくまで参考)
- 運行管理者試験の勉強経験がある・現場での法令知識が豊富な方:過去問中心に10〜20時間前後が目安になるケースも
- 法律の文章に不慣れ・勉強から長く離れている方:20〜40時間以上かかることもある
- どちらも「条文集の引き方」に慣れる練習を必ず含めること
※仕事と並行しながらになる場合は、早めのスタートが安全です。
合格するための勉強方法
① 過去問を繰り返す(これが基本)
役員法令試験は、過去問から似た問題が繰り返し出題される傾向があります。関東運輸局のウェブサイトで過去問・条文集ともに公開されています。まずこれを全てダウンロードし、実際に解くことがスタート地点です。
② 条文集を手元に置いて過去問を解く
問題を解く際は、必ず条文集を手元に置いてください。「この問題で問われている内容はどの法律の、どの条文か」「どうすれば素早く探し出せるか」を常に意識しながら取り組むことで、本番での引き方が身につきます。
③ 独学は非効率。対策セミナーが最短ルート
過去問は公開されていますが、独学でやみくもに解いていくのは要点がわからず非効率です。行政書士が主催する役員法令試験対策セミナーの受講が、最も効率よく合格に近づく方法といえます。
当事務所でも対策サポートを行っています。「何から始めればいいかわからない」「1回落ちてしまって次が怖い」という方は、お気軽にご相談ください。
④ 申請前から準備を始める
申請してから勉強を始めると、準備期間が想定より短くなります。「許可申請を考え始めた」タイミングで、並行して試験の準備も始めておくのがベストです。
法律を「暗記するもの」と思わないほうがいいというのが自分の感覚です。改善基準告示も、貨物自動車運送事業法も、現場で自分が守ってきたルールとほぼ同じです。「ああ、これ実際にやってたやつだ」と思いながら読むと、頭に入りやすい。現場経験のある方のほうが有利なことも多いです。ただ、条文集の使い方だけは現場経験では身につかない。そこだけは必ず練習してください。
よくある疑問
Q. 運行管理者試験と同じ?
別の試験です。運行管理者試験は30問中18問以上正解、役員法令試験は30問中24問以上正解と合格基準が異なります。ただし出題範囲が重なる部分が多いため、運行管理者資格をお持ちの方はアドバンテージがあります。
Q. 役員全員が受けなければいけない?
いいえ。登記されている常勤役員のうち1名が合格すればOKです。
Q. 試験に受かる前に申請できる?
はい。申請してから試験を受けるのが正しい順序です。申請前に受験することはできません。
Q. 2回落ちたらもう許可は取れない?
その申請での許可取得は通常難しくなりますが、取り下げ後に改めて申請をやり直すことはできます。一定期間の申請禁止といったペナルティもありません。ただし、やり直しによる時間・費用・資金のロスは現実として大きいです。
こんなときはご相談ください
どの状況でも、早めに動くほど選択肢が広がります。当事務所では試験対策サポートも行っていますので、まずは状況をお聞かせください。
- 役員法令試験は許可申請の必須プロセス。合格しないと許可は下りない
- 30問中24問正解(80%)が合格ライン。試験時間は50分、1問約1分40秒
- 出題範囲は全13法令。運行管理者試験の知識がある方はアドバンテージあり
- 関東運輸局管内の合格率は50〜79%で月によって大きく変動(令和7年〜令和8年3月実績)
- 条文集はかなりの分量。「当日何とかなる」は絶対NG。引き方の練習が必須
- 一般的には1申請につき2回まで。2回不合格で取り下げ・申請やり直しが一般的
- 2回落ちても再申請は可能。ただし半年以上のロス・資金減少リスクあり
- 2024年4月改正で条文集が更新済み。最新版で対策を
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