運送業のM&A完全サポート【2026年版】|相場・進め方・許可の引き継ぎを行政書士が解説

運送業のM&A完全サポート【2026年版】|相場・進め方・許可の引き継ぎを行政書士が解説

行政書士あおばと合同事務所 代表行政書士 横山輝明

横山 輝明 行政書士あおばと合同事務所 代表

現場経験28年|運送業許可・巡回指導対策

神奈川県大磯町在住・東京都中野区事務所|首都圏即対応・ 全国対応可

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M&A SUPPORT GUIDE

運送業のM&A完全サポート【2026年版】

相場・進め方・許可の引き継ぎを
行政書士が現場目線で解説します

横山輝明です。

私は28年間、物流と建設の現場で仕事をしてきました。水道工事、古紙回収、危険物輸送。いろんな現場を経験してきましたが、その中でずっと感じてきたのは、運送会社は「トラック」「人」「許可」の3つがそろって初めて成り立つということです。

だから運送会社のM&Aは、普通の会社の売買とは少し勝手が違います。一般貨物自動車運送事業許可をどう引き継ぐか、ここを理解しているかどうかで、手続きもスケジュールも大きく変わります。

この記事では、運送業M&Aの相場感から手続きの流れ、売却前にやっておくべきことまで、行政書士の立場で整理しました。

2026年、運送業M&Aが増えている3つの理由

運送業のM&Aはここ数年で目に見えて増えています。背景にあるのは、主に3つの動きです。

①2024年問題で経営環境が変わった

2024年4月からトラックドライバーの時間外労働に年960時間の上限が設けられました。走れる距離が減れば、そのぶん売上も落ちます。同時に人件費は上がる。運賃改定が間に合わなかった会社は、じわじわと体力を削られている状態です。

「一人ではもう回せない」と判断した経営者が、大手グループへの参画やM&Aという選択肢を真剣に考え始めています。

②後継者がいない

帝国データバンクの調査では、運輸・通信業の社長平均年齢は60歳を超えています。子供に継がせたくても本人が乗り気でない、社員に任せたくても資金の問題がある。そういった会社が、事業を止めないためにM&Aを選んでいます。

③大手が中小を積極的に買っている

2024年10月にはセイノーホールディングスが三菱電機ロジスティクスの株式66.6%を取得、SBSホールディングスも同年NSKロジスティックスの株式66.61%を取得しています。大手は優良な地域密着型の運送会社を常に探しています。地域や会社の内容によって差はありますが、条件の良い運送会社には以前より買い手が集まりやすい状況です。

株式譲渡と事業譲渡|運送会社はどっちが向いているか

M&Aの手法は大きく2つあります。中小運送会社のM&Aは株式譲渡が主流です。理由は許可の扱いにあります。

比較項目 株式譲渡 事業譲渡
運送業許可の扱い 法人に残るため引き継ぎ手続き原則不要 譲渡譲受認可申請が必要
手続きの手間 比較的シンプル 契約・許認可を個別に引き継ぐ
従業員雇用 自動的に承継 個別に再雇用契約が必要
売り手の税率 譲渡益に約20.315% 法人税(実効税率約30%)
簿外債務リスク 買い手が承継 引き継ぐ範囲を選べる

株式譲渡なら、許可・取引先・従業員をまるごと引き継げます。買い手にとっても手続きが少なくてすむため、話がまとまりやすい面があります。特定の事業だけを切り出したい場合や、買い手が簿外債務を強く警戒しているケースでは事業譲渡が選ばれることもありますが、中小運送会社の大多数は株式譲渡です。

売却相場の目安と企業価値を高める要因

よく使われる考え方|年買法

中小企業のM&Aでよく参考にされるのが年買法という考え方です。

時価純資産 + 営業利益 × 3〜5年分

例)純資産1億円・営業利益3,000万円の場合 → 1.9億〜2.5億円が目安

ただし、これはあくまで実務で参考にされる計算の一例です。年数(のれん期間)は業績の安定性や買い手の評価で変わりますし、2024年問題対応の不確実性がある今は短めに見積もられるケースもあります。実際の売却額は会社の状況や交渉によって大きく異なりますので、参考値としてご確認ください。

評価に影響する5つのポイント

評価項目 高評価の条件 低評価リスク
荷主の分散 上位1社30%未満 特定大口に依存
利益率 直近3期で安定して5%以上 赤字または乱高下
ドライバー定着率 若手比率高・離職率低 高齢化・離職多発
許認可の安定性 行政処分歴なし 違反歴・指導歴あり
組織の自立度 社長不在でも回る仕組みあり 社長に極端に依存

売ろうと決めてからこれを整えようとしても、正直間に合いません。買い手は直近3期の数字を見ます。評価を上げるには数年単位の準備が必要です。

一般貨物自動車運送事業許可の引き継ぎ|ここが一番大事

M&Aで一番確認しておきたいのが、運送業許可の扱いです。

「株式譲渡だから何もしなくていいと思っていた」「事業譲渡でも許可はそのまま使えると思っていた」――この誤解は本当に多いです。株式譲渡と事業譲渡では許可の扱いがまったく違うため、M&Aの形を決める前に必ず確認してください。

株式譲渡の場合

株式譲渡では許可を持つ法人そのものが変わらないため、許可の承継手続きは原則として不要です。ただし代表者や役員が変わる場合は変更届が必要になります。「何もしなくていい」わけではなく、変更内容に応じた届出が必要かどうかを運輸局に確認することをお勧めします。

事業譲渡の場合|譲渡譲受認可申請

事業譲渡では、貨物自動車運送事業法第30条に基づき、譲渡側と譲受側が共同で譲渡譲受認可申請を運輸局へ提出する必要があります。認可が下りて初めて許可が引き継がれます。合併・会社分割の場合はそれぞれ別の認可手続きを確認する必要があります。

⚠️ 引き継ぎの6要件(事業譲渡時)

  • 譲渡物の要件:譲り受け側に譲渡物が存在すること
  • 資金の要件:事業開始に必要な所要資金(概ね6カ月分)の確保
  • 人の要件:欠格事由非該当・法令試験合格・運行管理者と整備管理者の確保
  • 営業所の要件:都市計画法・建築基準法等に適合した営業所と休憩所
  • 駐車場の要件:全車両を収容できる広さと法令適合
  • 車両の要件:事業用トラック最低5台(軽自動車・2輪車は除く)

特に「人の要件」の法令試験は見落としやすいポイントです。譲受側の役員が合格しないと認可が下りません。標準処理期間は1〜3カ月かかるため、クロージングのスケジュールを逆算して動く必要があります。

詳しくは運送業許可は譲渡できるのかの記事もご参照ください。また相続によって許可を引き継ぐケースについては運送業許可の相続・事業承継で別途まとめています。

M&Aの進め方|準備からクロージングまで

全体で6〜12カ月が目安です。4つのフェーズで進みます。

Phase 1

事前準備(1〜2カ月)

仲介会社の選定、財務資料・契約書類の整備、秘密保持契約(NDA)の締結。自社の強みと弱みを整理し、希望条件を明確にしておきます。

Phase 2

マッチング(2〜3カ月)

仲介会社が情報メモランダム(IM)を作成し、買い手候補へ匿名で打診。関心を示した候補と初期面談を行い、条件の擦り合わせを進めます。

Phase 3

基本合意・デューデリジェンス(1〜2カ月)

基本合意書(LOI)締結後、買い手が財務・法務・税務・労務・許認可を詳細に調査します。偶発債務と許認可リスクが重点的に確認されます。

Phase 4

最終契約・クロージング

最終契約書(DA)締結、対価支払い、株主名簿書換。クロージング後は売り手経営者がロックアップ期間(通常1〜3年)で引継ぎに協力します。

売却前3年でやっておくべきこと

売却を考えているなら、数年前から準備しておくことが重要です。買い手は直近3期の決算と事業構造を重点的に見ます。「売ろう」と決めてから整えようとしても、その時点の数字はもう買い手に見えています。

「まだ売らなくていい」という時期こそ、一番条件の良いタイミングです。業績が悪化してから動くと、買い手が見つからないか、評価が大きく下がります。

売却前の準備リスト

  • 数字管理の整備:車両別・荷主別の収益管理、KPIの月次可視化
  • 属人性の排除:配車・営業・経理の権限委譲、業務の標準化
  • 荷主の分散:特定大口依存を減らし、上位1社30%未満を目指す
  • 許認可の整理:行政処分歴の有無確認、整備記録・労務管理の点検
  • 個人保証の地ならし:主要取引銀行との関係構築、経営者保証ガイドラインの活用

現場28年チェックポイント

🔧 横山輝明|現場経験28年からのひとこと

デューデリジェンスで買い手が一番気にするのが、許認可の安定性とドライバーの定着率です。

巡回指導で指摘が多い会社、ドライバーが毎年3割入れ替わる会社は、財務の数字が良くても評価が下がります。現場が荒れている会社は、見ればすぐ分かります。

法令を守って、ドライバーを大事にして、記録をきちんとつける。結局、一番評価されるのはそこだと私は思っています。

よくある質問

Q. 株式譲渡でM&Aをすれば運送業許可はそのまま使えますか?

A. 株式譲渡では許可を持つ法人そのものが変わらないため、原則として許可承継の認可申請は不要です。ただし代表者や役員が変わる場合は変更届が必要になります。「何もしなくていい」わけではないので、事前に管轄運輸局に確認することをお勧めします。

Q. 事業譲渡の場合、許可の引き継ぎに時間はどのくらいかかりますか?

A. 譲渡譲受認可申請の標準処理期間は1〜3カ月です。クロージング日を認可取得後に設定する必要があるため、日程設計は早めに行うことが重要です。

Q. 赤字の運送会社でもM&Aで売れますか?

A. ケースによります。許可・車両・ドライバー・荷主に魅力があれば買い手がつくこともありますが、評価額は大きく下がります。業績が安定しているうちに動くほうが、有利な条件で話が進みやすいです。

Q. 従業員の雇用は守れますか?

A. 株式譲渡の場合、従業員の雇用契約は自動的に承継されます。雇用条件の維持期間や給与水準の継続を最終契約書に明記することで、法的拘束力を持たせることも可能です。

Q. 経営者の個人保証はどうなりますか?

A. 株式譲渡完了のタイミングで、金融機関と個人保証の解除交渉を行うのが一般的です。経営者保証ガイドラインを活用することで解除の可能性が高まる場合があります。主要取引銀行との関係を日頃から築いておくことが大切です。

📌 まとめ

  • 運送業M&Aは2024年問題・後継者不足を背景に増加。条件の良い会社には買い手が集まりやすい状況
  • 中小運送会社は株式譲渡が主流。許可・従業員・取引先をまるごと引き継げる
  • 売却相場の参考値は「時価純資産+営業利益×3〜5年分」。実際は会社の状況や交渉で変わる
  • 事業譲渡では譲渡譲受認可申請が必要。標準処理期間1〜3カ月を逆算して動く
  • 売却を考えているなら、数年前から準備しておくことが重要。現場の安定が財務以上に評価される
  • 許認可・荷主・ドライバー労務など業界固有の論点は、業界を知る専門家に相談を

📝 noteマネーピックアップ 13回掲載

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参考資料

e-Gov法令検索「貨物自動車運送事業法」
https://laws.e-gov.go.jp/law/401AC0000000083

全日本トラック協会「日本のトラック輸送産業 現状と課題2025」

帝国データバンク 社長分析調査

※本記事は2026年7月時点の情報に基づき作成しています。M&A実施にあたっては、最新の法令・税制を確認し、専門家にご相談ください。なお、本記事の内容により生じたいかなる損害についても責任を負いかねます。

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