横山輝明(テルです)。神奈川県大磯在住、行政書士あおばと合同事務所の代表行政書士です。
「まさかうちが処分を受けるとは思っていなかった」
行政処分を受けた運送会社の多くが、こう言います。でも処分の記録を見ると、違反の内容はほぼ毎回同じです。点呼・業務記録・指導監督——地味だけど、毎日の積み重ねが問われる項目ばかり。
2026年4月、関東運輸局が管内の行政処分を公表しました。17社が処分を受け、最も重い事案では事業停止30日間。
この事例をもとに、処分の仕組みと日常管理のポイントを整理します。
📋 この記事の目次
- 2026年4月・関東の行政処分の概要
- よくある違反項目トップ5
- 違反点数制度の仕組み
- 監査はどんなきっかけで来るか
- 現場28年チェックポイント
- よくある質問
1. 2026年4月・関東の行政処分の概要
関東運輸局は2026年4月30日、一般貨物自動車運送事業者に対して同月に行った行政処分を公表しました(※1)。
17社
処分を受けた事業者数
30日
最も重い処分(事業停止)
31点
最大違反点数
最も重い処分を受けた事案は、違反件数7件・違反点数31点で事業停止30日間・輸送施設使用停止・輸送の安全確保命令の3つが同時に課されました。
違反内容は点呼の実施義務違反・業務記録の記載事項違反・運行記録計による記録義務違反・運転者に対する指導監督違反・定期点検整備の実施違反など。特別な違反ではなく、日常業務の積み重ね不足が原因です。
※1 出典:関東運輸局「令和8年4月の行政処分について」(2026年4月30日公表)
関東運輸局 行政処分PDF →
2. よくある違反項目トップ5
今回の17社の処分内容を見ると、繰り返し登場する違反項目があります。
🔴 第1位:点呼の実施義務違反
今回の処分事案でも複数社が該当。出発前・帰着後の点呼は法令上の義務です。記録の不実記載(虚偽記載)も別途違反として認定されます。
🔴 第2位:勤務時間等告示の遵守違反
運転者の拘束時間・休息期間に関する基準違反。2024年問題以降、労働局との連携で通報→監査というルートが増えています。
🟠 第3位:業務記録の記載事項違反
運転日報の記載漏れ・不備。「書いてある」だけでなく「正確に書いてある」かどうかが確認されます。
🟠 第4位:運転者に対する指導監督違反
安全教育の実施・記録が不十分なケース。「やった」という事実だけでなく、記録として残っているかどうかが重要です。
🟡 第5位:定期点検整備の実施違反
3か月点検・12か月点検の未実施または記録不備。整備管理者の研修受講義務違反とセットで指摘されるケースも。
3. 違反点数制度の仕組み
行政処分には「違反点数」が付されます。点数が蓄積されると処分が重くなる仕組みです。
💡 点数は過去3年間の累計
違反点数は過去3年間の処分を累計します。「前回は軽かったから大丈夫」とはなりません。一定の要件を満たすと点数が消滅する制度もあります。行政処分基準は改正されることがありますので、詳細は最新の行政処分等の基準をご確認ください。
今回の事例では違反点数31点で事業停止30日間。同じ事業者点数31点がついており、過去の累積がなくてもこの水準に達した事案です。
4. 監査はどんなきっかけで来るか
今回の17社の処分記録を見ると、監査のきっかけが明記されています。
法令違反の疑いがある旨の情報
今回公表された17社の事例では最も多く見られました。内部告発・取引先からの通報・匿名情報などが含まれます。
労働局からの通報
勤務時間違反・社会保険未加入などで労働局が把握→運輸局へ通報というルートです。2024年問題以降、このルートでの監査事例が指摘されています。
公安委員会からの通知
酒気帯び・事故・救護措置義務違反などで警察が把握→通知というルートです。
巡回指導の拒否
適正化事業実施機関(トラック協会)の巡回指導を拒否すると、それ自体が監査のきっかけになります。今回もこのケースが含まれています。
⚠️ 「巡回指導を断る」は逆効果
「準備が整っていないから断る」という判断は、監査を呼び込むリスクがあります。巡回指導は行政処分ではなく改善指導の機会です。受け入れて改善するほうが、結果としてリスクは低くなります。
🔧 現場28年チェックポイント
危険物輸送を含む運送業界での実務に28年以上従事した経験から言うと、処分を受ける会社と受けない会社の差は「特別な設備や制度があるかどうか」ではなく、私の経験上、最も大きな要因の一つは「毎日の記録をちゃんとやっているかどうか」です。
① 点呼記録は「やった証拠」として残す
点呼をやっていても記録がなければ「やっていない」と同じ扱いになります。日時・内容・確認事項をその場で記録する習慣をつけてください。
② 運転日報は「正確に」書く
空欄・後から書き直し・実態と乖離した記載は「不実記載」として別途違反になります。その日のうちに、実態通りに記録してください。
③ 安全教育は「記録まで」がセット
教育をやっただけでは不十分です。実施日・内容・参加者・サインが揃った記録を保管してください。監査で重点的に確認される書類のひとつです。
よくある質問
Q. 監査が入ると必ず処分されますか?
監査の結果、違反が認められない場合や軽微な場合は文書警告・改善指導にとどまることもあります。処分の有無・重さは違反の内容・件数・累積点数等によって判断されます。
Q. 事業停止処分を受けると許可は取り消されますか?
事業停止処分と許可取り消しは別です。ただし、処分が繰り返されたり違反点数が一定以上累積したりすると、許可取り消しの対象となる場合があります。詳細は最新の行政処分基準をご確認ください。
Q. 巡回指導と監査は何が違いますか?
巡回指導はトラック協会(適正化事業実施機関)が行う指導で、行政処分には直結しません。監査は運輸局・運輸支局が行うもので、違反が認められると行政処分の対象になります。巡回指導の結果が悪い場合、監査につながることがあります。
📎 参考リンク(公的情報)
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※本記事は公開日時点の法令・行政運用に基づき作成しています。制度改正等により内容が変更される場合があります。
※行政処分の基準・違反点数の運用は個別事情により異なります。具体的な内容については管轄運輸支局または専門家へご確認ください。
※記事中の処分事例は関東運輸局公表情報(2026年4月30日)をもとにしています。
