巡回指導の連絡が来て、慌てて書類を探し始める。運送業の現場では、よくある話です。
「何を見られるのか」「何が足りていないのか」を事前に把握しておくだけで、結果は大きく変わります。
この記事では、巡回指導で実際にチェックされる7項目を順番に解説します。運送・物流業務に長年携わってきた経験をもとに、現場目線で書きます。
⚠️ 巡回指導の内容・基準は変更されることがあります。本記事は2026年時点の情報をもとにしており、最新情報は適正化実施機関または関東運輸局にご確認ください。
巡回指導とは何か(監査との違い)
巡回指導は、国土交通大臣が認定した適正化実施機関(公益社団法人全日本トラック協会・各都道府県トラック協会)が行う巡回・指導です。運輸局が行う「監査」とは別物です。
| 巡回指導 | 運輸局監査 | |
|---|---|---|
| 実施機関 | 適正化実施機関(トラック協会) | 地方運輸局 |
| 目的 | 指導・改善支援 | 法令違反の是正・処分 |
| 事前連絡 | あり・なし両方 | 事前連絡なしで実施されるケースもあります |
| 結果 | A〜Eの5段階評価 | 警告・車両停止・事業停止等 |
巡回指導でE評価や重大な指摘事項がある場合、運輸局による監査につながる可能性があります。「巡回指導は軽い」と思っていると、後で大きな問題になります。
神奈川では、新規許可後6ヶ月前後で巡回指導が行われるケースがあります。許可を取ったら、早めに書類体制を整えることが重要です。
①運転者台帳
運転者台帳は、ドライバー1人ひとりについて作成・保存が必要な書類です。記載漏れが最も多い項目のひとつです。
主な記載事項:
- 氏名・生年月日・住所
- 運転免許証の番号・有効期限・種類
- 雇入れ年月日・運転者となった年月日
- 事故歴・違反歴
- 健康診断の受診状況
雇入れ・退職のたびに更新が必要です。「入社時に作ったまま放置」「免許の更新後に記載を変えていない」というケースがよく見られます。定期的な見直しが必要です。
②点呼記録
点呼は、運行前・運行後にドライバーの状態を確認する手続きです。記録として残すことが義務です。
点呼記録に含めるべき主な内容:
- 点呼の実施日時・実施者・ドライバー名
- アルコール検知器による測定結果
- 健康状態の確認結果
- 車両の異常の有無
注意が必要なのは「記録だけ整っていて実施実態が伴っていない点呼」です。記録はあるが実態が伴っていない状態は、巡回指導・監査で確認されます。アルコールチェック記録との整合性も確認されます。
③運転日報
運転日報は、1運行ごとに作成が必要な書類です。
主な記載事項:
- 運転者名・車両番号
- 出発・到着の日時・場所
- 運転時間・休憩時間
- 積載物・走行距離
- 燃料使用量
現場でよく見られる問題が、書き方がドライバーごとにバラバラになっているケースです。記載項目の抜け・時間の記録漏れ・字が読めないレベルの記載など、書式は統一されていても中身が整っていないことがあります。
運転日報は拘束時間・休息時間の管理にも使われるため、記載が不正確だと労働時間管理の問題にも発展します。
④労働時間・拘束時間の管理
2024年4月から、トラックドライバーの時間外労働の上限規制が適用されています。トラックドライバーには、2024年4月から時間外労働の上限規制(年間960時間)が適用されています。
巡回指導では、この基準を守った運行管理ができているかが確認されます。
神奈川は特に注意が必要
神奈川は首都圏の交通量の影響を受けやすく、渋滞によって拘束時間が伸びやすいエリアです。横浜から都内に向かうだけで、渋滞で1〜2時間消えることがあります。それが毎日続けば、拘束時間の管理は意識していないとすぐ限界に達します。
「今まで回ってきたスケジュール」が現行の基準に合っているかどうか、改めて確認することをおすすめします。
⑤車両点検記録
車両の点検には、日常点検と定期点検があります。どちらも記録として残すことが必要です。
- 日常点検:1日1回、運行前に実施。タイヤ・ブレーキ・灯火類等の確認。
- 定期点検:3ヶ月ごと(事業用車両)。整備管理者が実施・確認。
よく見られる問題は、点検は実施しているが記録が残っていないケースです。記録が残っていない場合、点検実施を証明できないため、指摘対象になる可能性があります。日常点検記録は現場で毎日つける習慣を作ることが重要です。
⑥健康診断の実施状況
ドライバーへの健康診断は、年1回以上の実施が必要です。ただし、深夜業(午後10時〜午前5時)に従事する場合は年2回が必要です。
運送業のドライバーは深夜・早朝の運行があるケースが多く、「年1回で足りると思っていた」という見落としが起きやすい部分です。
健康診断の結果記録・受診状況の管理も確認されます。受診したが記録が残っていない、受診していないドライバーがいる、というケースは指摘の対象になります。
⑦事故防止対策
安全教育の実施状況と記録が確認されます。
- 年間を通じた安全教育計画の策定
- 教育の実施記録(日時・内容・参加者)
- ヒヤリハット事例の収集・共有
- 事故が発生した場合の記録・再発防止策
「口頭では伝えている」は記録がなければ確認できません。安全教育は実施した証拠を残すことが重要です。
指摘されやすい不備TOP3
現場で見てきた経験から、巡回指導で特によく指摘される不備を3つ挙げます。
- 点呼記録の不備・アルコールチェック記録の抜け:「やっているが記録していない」が最多。記録の習慣化が最優先。
- 運転者台帳の更新漏れ:免許更新・雇入れ・退職後の更新が追いついていないケース。
- 拘束時間の管理不足:運転日報と実態が合っていない、もしくは時間外労働の集計をしていないケース。
神奈川特有の傾向
- 横浜・川崎:首都圏の主要物流拠点のため運行本数が多く、拘束時間の管理が特に厳しく見られる傾向があります。渋滞による運行遅延が常態化しているエリアのため、スケジュール管理の実態が書類と合っているかが焦点になりやすいです。
- 湘南・藤沢・平塚エリア:観光・季節需要の波があり、繁忙期の運行管理が課題になりやすいです。
巡回指導の結果がE評価になると何が起きるか
巡回指導の評価はA〜Eの5段階です。E評価(総合評価が最低ランク)が出ると、運輸局による監査につながる可能性があります。
運輸局監査は行政処分(警告・車両停止・事業停止・許可取消)の権限を持っています。巡回指導の段階で改善できれば、監査には発展しません。
「巡回指導で指摘されたが、特に対応しなかった」という状態が最もリスクが高いです。指摘を受けたら、速やかに改善することが重要です。
📋 現場28年からのチェックポイント
- 点呼記録・アルコールチェック記録は毎日つける。記録がなければやっていないと同じ
- 運転者台帳は免許更新・雇入れ・退職のたびに更新する
- 運転日報の書き方はドライバー全員で統一する。拘束時間・休息時間の記載漏れに注意
- 深夜業があるドライバーの健康診断は年2回。「年1回でいい」は間違い
- 安全教育は実施した記録を残す。口頭だけでは確認できない
- 神奈川は渋滞で拘束時間が伸びやすい。運行スケジュールを定期的に見直す
- 巡回指導でE評価が出たら速やかに改善する。放置すると運輸局監査に発展するリスクがある
- 神奈川では新規許可後6ヶ月前後で巡回指導が行われるケースがある。許可取得後すぐに書類体制を整える
📎 参考・根拠情報(公式)
まとめ
巡回指導で確認される7項目を整理すると:
- ①運転者台帳(記載・更新の徹底)
- ②点呼記録(毎日・形だけにしない)
- ③運転日報(統一・漏れなく記載)
- ④労働時間・拘束時間(2024年問題への対応)
- ⑤車両点検記録(日常・定期、どちらも記録を残す)
- ⑥健康診断(深夜業は年2回)
- ⑦事故防止対策(安全教育の記録を残す)
書類が「形だけ整っている」状態では不十分です。現場で実際に運用できている状態になっているかどうかが問われます。
「うちの書類、大丈夫かな」という確認は、以下からお気軽にご相談ください。
※行政処分・監査対応等については、個別事情により判断が異なります。詳細は関東運輸局・適正化実施機関等へご確認ください。
※本記事の内容は2026年時点の情報をもとにしています。法改正・制度変更により内容が変わることがあります。最新情報は適正化実施機関または関東運輸局にご確認ください。
