「運送業の許可、トータルでいくらかかるの?」
許可申請にかかる費用として「登録免許税12万円」はよく知られていますが、実際にはそれ以外にも多くの費用が発生します。
でも実際に許可を取るには、登録免許税以外にも、車両・保険・営業所・社会保険などの費用が次々とかかってきます。
運送・物流関連業務に長年携わってきた経験をもとに、運送業許可に特化した行政書士として活動しています。今回は「神奈川で運送業許可を取るとき、実際にいくらかかるか」をできる限り具体的に整理します。
費用の全体像を把握したうえで準備を進めてください。
まず結論:費用の全体像
細かい説明の前に、全体像を表でまとめます。
| 費用項目 | 金額の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| ①登録免許税 | 12万円(固定) | 法定費用。誰がやっても同額。当事務所の報酬に含む |
| ②行政書士報酬 | 150,000〜600,000円 | 事務所によって大きく差がある(当事務所は登録免許税込み66万円) |
| ③車両費用(5台以上) | 500,000円〜(中古) | 新車・リースなら大幅増 |
| ④任意保険・貨物保険 | 年間50万〜100万円程度 | 台数・用途で変動 |
| ⑤営業所・車庫の確保 | 月額5万〜30万円(地域差大) | 神奈川は横浜・川崎が特に高め |
| ⑥社会保険・労働保険 | 従業員数による | 審査対象となる。見落とし多数 |
| トータル(最低ライン) | 約100〜150万円〜 | 許可取得費用のみ。車両・物件は別途 |
「思ったより多い」と感じた方、その感覚は正しいです。許可を取ること自体がゴールではなく、取ったあとに現場を回せる体制を整えることがゴールです。費用の全体像を把握せずに進めると、後でつまずきます。
①登録免許税:12万円(固定)
一般貨物自動車運送事業の許可申請には、登録免許税として12万円が必要です。これは法律で定められた国への納付金で、どこの行政書士に依頼しても、自分で申請しても、同じ金額です。
許可が下りてから納付するため、申請時点ではまだ支払いません。ただし、準備しておく必要があります。
注意点として、申請が却下された場合は還付されません。申請前の要件確認が重要な理由の一つです。
なお、当事務所では登録免許税12万円を報酬に含めています。「許可が下りたら追加で12万円」という請求は発生しません。
②行政書士報酬:相場と「安さのリスク」
ここが最も差が出る部分です。
市場の相場は概ね15万円〜60万円程度と幅があります。費用体系が簡略化されている事務所では10万円前後の設定もありますが、業務範囲の内訳を確認することが重要です。
報酬額より「業務範囲」を確認する
報酬を比較する際は、金額だけでなく何が含まれているかを確認することが重要です。主なチェックポイントは以下の3点です。
- 補正対応(書類不備が生じた場合の対応)は含まれるか
- 営業所・車庫の事前調査は含まれるか
- 許可後の変更届や巡回指導対応はどこまでカバーされるか
業務範囲が明示されていない場合、想定外の追加費用や手続きの遅延につながることがあります。契約前に確認しておくと安心です。
当事務所の報酬について
あおばと合同事務所では、一般貨物運送事業許可のフルサポートを66万円(登録免許税12万円込み)で提供しています。
この金額には、営業所・車庫の事前調査、書類作成・申請、補正対応、許可後の変更届サポートまでをすべて含んでいます。通常の許可申請業務の範囲内では、原則として追加費用は発生しません(申請内容の大幅変更や追加調査が必要となった場合を除きます)。
「高い」と感じる方もいるかもしれません。ただ、要件不備による手続きの遅延や、許可後の現場体制が整わないことによる経営上のリスクを考えると、最初から適切な準備をすることのほうが合理的だと考えています。
③車両費用:最低5台以上が必要
一般貨物運送事業の許可要件として、事業用の車両が5台以上必要です(霊柩・特定等を除く)。
取得方法別の費用感
- 中古購入:1台50万〜150万円程度(5台で250万〜750万円)
- 新車購入:1台200万〜500万円以上(5台で1,000万円〜)
- リース:月額1台3万〜8万円程度(初期費用は抑えられるが、長期コストは高い)
神奈川・湘南エリアで見ると、中古トラック市場は首都圏需要の影響を受けており、状態の良い車両は価格が高めです。申請前から並行して車両を探すことをおすすめします。
なお、申請時点で5台を保有または確実に確保できる状態であることが求められます。「許可が下りたら買う」では間に合いません。
④任意保険・貨物保険:「現場が回らない」を防ぐ費用
運送業を始めるにあたって、保険は絶対に省けません。許可要件として明示されているわけではありませんが、未加入で運送事業を行うことは経営リスクそのものです。
必要な保険の種類
- 自動車任意保険:事業用(緑ナンバー)は一般車両と保険が別。一般用の保険では事故時に保険が下りないケースがあります。
- 貨物保険:輸送中の荷物に損傷・紛失が生じた場合の補償。荷主との契約上、加入を求められることが多い。
費用は車両台数・輸送品目・走行距離によって大きく変わりますが、目安として年間50万〜100万円前後は見ておく必要があります。危険物輸送を行う場合はさらに保険料が上がります。
私自身が危険物輸送の現場経験を持つからこそ、この部分は強調しておきたい。許可を取ってからでは遅い準備です。
⑤営業所・車庫の確保:神奈川特有の難しさ
許可要件として、適切な営業所と、車両全台を収容できる車庫が必要です。これが神奈川では特にハードルが高い。
神奈川・湘南エリアの実情
- 横浜・川崎:物件単価が高く、用途地域(第一種低層住居専用地域等)の制限で使えない物件が多い。特に車庫適地の確保が難しい。
- 湘南・平塚・秦野エリア:比較的物件は確保しやすいが、物流拠点としての立地条件と合わせた検討が必要。
用途地域の確認は必須
「この物件を車庫にしたい」という相談で、用途地域の確認を怠って申請後に要件不備が発覚するケースは少なくありません。全部やり直しです。
物件を契約する前に、必ず行政書士に確認を取ることをおすすめします。当事務所では事前調査を報酬に含めています。
費用の目安:営業所(月額5万〜15万円)+車庫(月額5万〜30万円)。横浜・川崎の駅近・幹線道路沿いは特に高めです。
⑥社会保険・労働保険:最も見落とされる費用
一般貨物運送事業の許可審査では、社会保険・労働保険の適切な加入状況も確認されます。費用の見積もりから抜け落ちている方が非常に多い部分です。
具体的には以下の加入が必要です。
- 健康保険・厚生年金保険(社会保険)
- 雇用保険・労災保険(労働保険)
費用は従業員数と給与水準によって異なりますが、ドライバー5名の場合、会社負担分だけで月額30万〜50万円規模になることも珍しくありません。
「許可を取ってから加入すればいい」では間に合いません。申請前から加入状況を整えておく必要があります。
トータル費用:3パターンで試算
| パターン | 主な条件 | 目安金額(初年度) |
|---|---|---|
| 最低ライン | 中古車5台・郊外物件・費用重視で選んだ場合 | 約500〜800万円 |
| 標準 | 中古車5〜8台・神奈川郊外・適正報酬の行政書士 | 約1,500万円〜 |
| 余裕を持った準備 | 車両10台前後・横浜川崎エリア・運転資金含む | 約2,000万円〜 |
なお、上記には許可取得後の運転資金(人件費・燃料費・高速代等)は含まれていません。許可から実際に売上が立つまでの期間を3〜6ヶ月と想定し、その分の資金も手元に確保しておく必要があります。
報酬額だけで比較するときの注意点
報酬額だけで比較すると、業務範囲の違いによって想定外の費用が発生するケースがあります。
たとえば、車庫の用途地域確認が業務範囲に含まれていない場合、申請後に要件不備が発覚して物件を取り直すことになると、追加の費用と時間が発生します。申請書類の補正対応が別途請求になるケースも同様です。
「何が含まれていて、何が含まれていないのか」を最初に確認することが、結果的に余計なコストを防ぐことにつながります。
まとめ
神奈川で運送業許可を取る際にかかる費用を整理すると:
- 登録免許税(12万円・固定)
- 行政書士報酬(内容と範囲を確認して選ぶ)
- 車両費用(5台以上・事前確保が必要)
- 任意保険・貨物保険(事業用は専用保険が必要)
- 営業所・車庫(神奈川は用途地域確認が特に重要)
- 社会保険・労働保険(審査対象となる。事前加入が必要)
車両・物件の調達方法によって総額は大きく変わりますが、一般的には1,500万円規模以上の準備が必要となるケースが多く、横浜・川崎エリアや台数が多い場合はさらに上振れします。
「費用をできるだけ抑えたい」という気持ちはわかります。ただ、許可は取ったあとの現場が本番です。取得時のコストを削って後から詰まるより、最初から適切な準備をすることが結果的に近道です。
費用についての疑問、「うちの場合はどうなるか」という個別の確認は、以下からお気軽にご相談ください。
📋 現場28年からのチェックポイント
- 登録免許税12万円は許可後の納付。事前に用意しておく
- 車両5台は「申請時点で確保済み」が原則。許可後では間に合わない
- 緑ナンバーの任意保険は事業用専用。白ナンバー用では事故時に対応されないケースがある
- 車庫候補物件は用途地域を必ず事前確認。契約後の発覚は全部やり直し
- 社会保険・労働保険は申請前から加入状況を整えておく
- 行政書士報酬は金額より業務範囲(何が含まれるか)で選ぶ
※本記事の費用は2026年時点の目安です。法改正・市況変化により変動することがあります。
