横山輝明です。
「運送業を始めたい」「許可が必要かどうか確認したい」という相談を受けるとき、最初に聞かれるのはほぼ決まっています。
「何の許可が必要なんですか?」
一言で「運送業の許可」といっても、事業の種類や使う車両によって、必要な手続きはまったく異なります。この記事では、貨物運送業に関係する許可・届出・手続きを整理します。
目次
運送業の許可は「何を運ぶか」「何で運ぶか」で決まる
まず大前提として、運送業の許可が必要になるのは「他人の荷物を、有償で、自動車を使って運ぶ」場合です。
自社の荷物を自社のトラックで運ぶ場合、許可は不要です。無償で運ぶ場合も原則不要です。ただし、無償に見えても実質的に運賃相当の費用が含まれているケースは注意が必要です。
許可・届出の種類は、使う車両や事業の形態によって次のように分かれます。
許可・届出の種類
① 一般貨物自動車運送事業(許可)
貨物運送業で最も広く利用されている許可です。
軽自動車以外のトラック(2t・4t・大型・ダンプなど)を使って、不特定多数の荷主から依頼を受け、有償で荷物を運ぶ事業が該当します。緑ナンバーを取得して事業を行います。
引っ越し業や積載車による自動車輸送なども、原則として一般貨物の許可対象です。霊きゅう運送など、一部の事業には最低車両数の特例があります。
申請から許可取得まで、標準でおおむね数か月かかります。補正や計画内容によって長引くことがあります。
許可要件の概要
| 要件 | 概要 |
|---|---|
| 資金 | 車両費、施設費、人件費、保険料などから所要資金を算出し、その全額以上の自己資金を確保する。必要額は事業計画によって異なる |
| 人員 | 事業計画を実行できる人数の運転者を確保し、営業所ごとに必要な運行管理者・整備管理者を選任する |
| 営業所 | 都市計画法、建築基準法、農地法、自治体条例などに抵触せず、営業所として使用できること |
| 車庫 | 原則として営業所に併設。併設できない場合は管轄運輸局が定める距離基準内であること。前面道路の幅員や使用権限も確認する |
| 車両 | 貨物登録のトラック(原則5両以上)。軽自動車は含まれない |
→ 自己資金・残高証明書の詳細はこちら:【神奈川】運送業許可の自己資金・残高証明書
申請上必要な道路幅員を満たしていても、車両の長さ、旋回スペース、出入口の形状によっては、実際の出入りが難しい車庫があります。
タンクローリーで狭い道に入ったことのある人間なら分かります。車両制限令の数字と、実際に車が曲がれるかどうかは、別の話です。
千葉の幕張エリアで経験した積み場は、タンクローリー2台が並ぶとギリギリの幅しかなく、構内には入れません。門が開いて台貫を通り、一度外に出て積み場へ向かう。立会いが来るまで外で待機してから、ようやく積み場に入る運用でした。
数字が通っても、実際の運行で困る車庫は存在します。車庫を決める前に、使う車両で実際に入れるかどうかを必ず確認してください。
→ 車庫前面道路の確認方法はこちら:車庫前面道路の幅員確認
② 特定貨物自動車運送事業(許可)
特定の単一荷主の需要に応じ、その荷主の貨物だけを有償で運送する事業です。一般貨物とは事業の性質や審査内容が異なり、荷主との継続的な契約関係や輸送量なども確認されます。複数の荷主の貨物を運ぶ場合は、一般貨物自動車運送事業の許可が必要になります。
③ 貨物軽自動車運送事業(届出)
軽トラックや軽バンを使って有償で荷物を運ぶ事業です。許可ではなく届出のため、要件が大幅に少なく、比較的すぐに始められます。黒ナンバーを取得します。
二輪車については、原則として排気量125ccを超える車両で有償配送を行う場合に、貨物軽自動車運送事業の届出が必要です。125cc以下の二輪車は、同届出の対象外です。
④ 貨物利用運送事業(登録・許可)
荷主と運送契約を結び、他のトラック事業者、鉄道事業者、航空事業者、船舶運航事業者などの実運送事業者を利用して貨物を運び、荷主に対して運送責任を負う事業です。
第一種貨物利用運送事業は登録制で、他の実運送事業者を利用して貨物を運送します。第二種貨物利用運送事業は許可制で、鉄道・航空・海運による幹線輸送と、その前後の集荷・配達を組み合わせ、荷主に対して一貫した運送責任を負う事業です。
許可取得の流れ(一般貨物自動車運送事業)
1. 申請書類の作成・提出
事業計画書、資金計画書、営業所・車庫の使用権限証明、車両書類などを揃えて、営業所管轄の地方運輸支局へ提出します。
2. 地方運輸局による審査
標準処理期間はおおむね数か月ですが、補正や計画内容によって長引くことがあります。
3. 役員法令試験
申請後、管轄運輸局が指定する日程で、常勤役員等が法令試験を受験します。関東運輸局では、法令試験は原則として奇数月に実施されます。不合格の場合は翌々月に1回だけ再試験を受けることができ、再試験にも不合格の場合は、申請を取り下げない限り却下処分となります。実施時期や取扱いは管轄運輸局によって異なりますので、最新案内を確認してください。
4. 2回目の残高証明書提出
審査中に、自己資金が引き続き確保されているかを確認するため、2回目の残高証明書などの提出を求められます。提出時期は管轄運輸局からの指示に従います。
5. 社会保険・労働保険の加入、36協定書の提出
従業員を雇用する場合は、適用関係に応じて社会保険・労働保険へ加入します。時間外・休日労働を行わせる場合は36協定を締結・届出します。運輸開始前確認では、その加入状況や届出状況を示す書類が必要になります。
6. 許可書の交付・登録免許税の納付
許可後、許可書の交付を受け、登録免許税12万円を所定の期限までに納付します(金融機関での納付が必要。コンビニ不可)。
7. 運行管理者・整備管理者の選任届提出
選任した運行管理者・整備管理者の届出書と資格証の写しを提出します。
8. 運輸開始前確認届の提出
事業開始の準備が整ったことを証明する届出です。この届が受理されないと、緑ナンバーへの変更に必要な連絡書が発行されません。
9. 緑ナンバー取得
事業用自動車等連絡書の交付を受けた後、運輸支局の登録窓口等で事業用車両への登録変更を行い、緑ナンバーを取得します。事業開始までに、原則として対人無制限・対物200万円以上の任意保険または共済へ加入し、損害賠償能力を確保します。なお、これは許可基準上の最低水準であり、実際には対物無制限など十分な補償内容を検討すべきです。
10. 運賃料金設定届・運輸開始届の提出
許可後は、原則として1年以内に事業を開始する必要があります。事業開始後は、運輸開始日から30日以内に運輸開始届を提出します。運賃・料金を設定した場合も、設定から30日以内に運賃料金設定届を提出します。
許可後に必要な主な変更手続き
許可を取ったら終わりではありません。事業内容の変更には届出や認可が必要です。
| 変更内容 | 主な手続き |
|---|---|
| 営業所の移転・新設 | 事業計画変更認可申請 |
| 車庫の移転・新設 | 事業計画変更認可申請 |
| 車両の増減 | 原則として事前届出。一定の要件に該当する増車等は認可申請 |
| 運行管理者の変更 | 選任・解任届 |
| 整備管理者の変更 | 選任・解任届 |
| 役員の変更 | 変更届 |
| 法人の名称・本店所在地の変更 | 変更届。ただし営業所移転を伴う場合は別途認可 |
| 運賃・料金の変更 | 運賃・料金変更届 |
変更手続きを忘れたまま営業を続けると、巡回指導や監査で指摘を受けます。許可後の管理も許可取得と同じくらい重要です。
→ 許可の譲渡・休眠会社の活用はこちら:運送業許可は譲渡できるのか
許可が不要なケースも確認する
「許可が必要かどうか」で迷う場面は意外と多いです。
→ 詳しくはこちら:運送業許可が不要なケース
まとめ
貨物運送業の許可・届出を種類別に整理すると、次のようになります。
| 事業の種類 | 使う車両・形態 | 手続き |
|---|---|---|
| 一般貨物自動車運送事業 | 軽自動車以外のトラック | 許可 |
| 特定貨物自動車運送事業 | 同上(荷主が特定1社) | 許可 |
| 貨物軽自動車運送事業 | 軽トラック・軽バン等 | 届出 |
| 第一種貨物利用運送事業 | 他の実運送事業者を利用 | 登録 |
| 第二種貨物利用運送事業 | 幹線輸送+集荷配達を一貫 | 許可 |
どの許可が必要か、自分のケースに当てはまるかどうか、判断に迷う場合はお気軽にご相談ください。
水道工事13年・古紙回収8年・危険物輸送7年、運送業の現場を28年経験してきた行政書士が、書類だけでなく実際の運行に合った対策を一緒に考えます。

