巡回指導・監査対策
Gマーク巡回指導で差がつく会社とは
運送業専門行政書士が教える
準備の全部
行政書士あおばと合同事務所|横山輝明
横山輝明です。
Gマークの申請をして、あとは審査を待つだけ──そう思っていたところに「巡回指導の日程調整のご連絡です」という電話が来る。
「え、書類審査じゃないの?」と焦る方が毎年います。
Gマーク(安全性優良事業所認定)は書類を出して終わりではなく、トラック協会の指導員が実際に営業所へ来て、日常の管理体制を確認します。これが巡回指導です。
私は危険物輸送を含む現場に28年いました。その後行政書士になって運送業の許認可・コンプライアンス支援をしています。両側を知っているからこそ言えることがあります。この記事に、準備のすべてを書きます。
① 巡回指導とは何か──監査とどう違うのか
まずここを混同している方が多いので整理します。
| 巡回指導 | 運輸局監査 | |
|---|---|---|
| 実施主体 | トラック協会(適正化事業実施機関) | 国土交通省・地方運輸局 |
| 目的 | 指導・助言。改善のサポート | 法令違反の確認・行政処分 |
| 結果 | Gマークの評価に影響する重要な要素 | 車両停止・事業停止等の処分 |
| タイミング | 事前連絡あり | 抜き打ちが多い |
巡回指導は「怒られる場」ではありません。ただし、その結果はGマークの評価に影響する重要な要素なので、軽く見ると後で痛い目に遭います。
指摘を受けて改善すれば問題ない。でも「改善指導を受けた内容を放置している」という状態だけは絶対に避けてください。それはGマークの評価に大きく影響する可能性があります。
📦 現場経験28年チェックポイント
巡回指導は、運輸局監査が来る前に自分の会社の穴を見つける機会だと思ってください。「怖い」じゃなくて「ありがたい予行演習」。この発想の転換だけで、準備の質が変わります。
② 当日の流れ
Gマーク申請後、審査期間中(夏〜秋頃が多い)に実施されます。ただし時期は地域や申請件数によって変わるので、申請したらいつ来ても対応できる状態を維持するのが基本です。
事前連絡
実施機関から電話で日時の調整連絡が入ります。慌てずに対応できる日程を確保してください。
当日:事業概況の聴取
指導員が営業所を訪問。まず経営の基本情報(事業計画・役員・車両台数)を確認します。
当日:帳票・書類の確認
運転日報・点呼簿・整備記録など、評価項目に基づいて確認されます。ここが最も時間がかかります。
指導結果の伝達
違反・改善事項がその場で伝えられ、指導書が交付されます。
改善報告
指摘があった場合は期限内に改善し、報告書を提出します。ここで放置するのが一番ダメです。
③ 指導員が時間をかけて見る4つのポイント
評価項目すべてを同じ熱量でチェックするわけではありません。指導員が特に時間をかけるのは決まっています。
🔍 ポイント1|経営情報の変更届は出ているか
申請内容と現状が一致しているかを最初に確認されます。
役員が変わった、営業所を移転した、車両が増減した──こういった変更を運輸支局に届出していないと、その時点で法令違反として指摘されます。「申請後に変わったことは全部届出した」という状態を作っておいてください。
🔍 ポイント2|帳票の「整合性」──ここが最大の関門
運転日報・点呼簿・労働時間集計表。この3つが一致しているかを念入りに突き合わせます。
運転日報では8時出発なのに、点呼簿では7時45分に点呼している。勤務開始の記録が食い違っている。こういう矛盾が1か所でも出ると「管理がずさん」と判断されます。
IT点呼・電子点呼を導入している場合は、システムのログや承認記録も確認されます。「デジタルだから大丈夫」ではなく、デジタルはデジタルで別の確認が来ると思っておいてください。
🔍 ポイント3|整備管理者は機能しているか
日常点検記録・3か月点検記録・整備記録を2年分保存しているかが確認されます。
特に小規模な事業所では、3か月点検をディーラーに丸投げしていて記録が手元にないケースが多い。整備工場に任せていても、その結果を整備管理者が把握して自社で保存する義務は会社側にあります。
「工場に聞けばわかります」は通りません。今日から自社でファイリングしてください。
🔍 ポイント4|ドライバーの社会保険・労働保険
Gマークは「安全な職場」かどうかも見ています。ドライバーが社会保険(厚生年金・健康保険)と労働保険(雇用保険・労災保険)に適切に加入しているかが確認されます。
ドライバーを個人事業主扱いにして保険に加入させていない場合、実態によっては労働関係法令上の問題となる可能性があります。未加入のドライバーがいる場合、Gマークの審査や評価に影響する可能性があります。
📦 現場経験28年チェックポイント
帳票の整合性は、現場の感覚で言うと「日報と点呼簿を別々の人が書いている場合」に崩れやすい。運行管理者がまとめて後から書いているケースも要注意です。「その日に書く」習慣をつけるだけで、整合性の問題はかなり減ります。
④ 準備しておく書類リスト
指導員が来たとき、書類をすぐ出せる状態かどうか。それだけで印象が変わります。「あれどこだっけ」をやっている間に、指導員の目つきが変わります。
| カテゴリ | 準備する書類 |
|---|---|
| 運行管理 | 運転日報(直近3か月・日付順)、点呼記録簿(直近3か月)、運行指示書、乗務員台帳 |
| 車両管理 | 日常点検記録簿(直近3か月)、定期点検整備記録簿、整備管理規程、整備管理者選任届の写し |
| 労働・安全 | 労働時間集計表(直近3か月)、安全教育記録、健康診断結果、36協定書 |
| 経営・許可 | 事業計画書、事業許可証の写し、役員名簿、社会保険・労働保険の加入証明書 |
書類が揃っていることより、記載内容に矛盾がないことの方が重要です。揃っているのに中身がバラバラ、というのが一番まずい状態です。
⑤ 評価に影響しやすいポイント
毎年同じパターンで指摘を受ける事業所があります。
❶ 整備記録が手元にない
「ディーラーに任せています」はNG。自社で2年間保存する義務があります。今日から整備工場に記録の写しを送ってもらう仕組みを作ってください。
❷ 運転日報と点呼簿の時刻が合っていない
記録を後からまとめて書いていると起きやすい。日報と点呼簿は「その日に書く」を徹底するだけで防げます。
❸ 申請後の変更を届出していない
役員交代・車両増減・営業所移転。「そのうち出そう」は危険。変更が生じた時点で速やかに届出してください。
❹ 指摘を受けたのに改善報告を出していない
これがいちばん印象が悪い。指摘内容が軽くても、期限内に改善報告を出さないとGマークの評価に大きく影響する可能性があります。
📦 現場経験28年チェックポイント
現場にいたとき、書類が「ある」ことと「使える状態にある」ことは全然違うと感じていました。ファイルに突っ込んであるだけで日付順になっていない、どの車の記録かわからない──指導員はそういうのを一瞬で見抜きます。見やすく整理されているだけで「管理できている会社」という印象を与えられます。
⑥ 不安なら事前に確認してください
「うちの帳票、これで大丈夫か」「整合性が取れているか自分では判断できない」という場合は、指導当日の前に専門家に確認してもらうことをお勧めします。
当日になって慌てて書類を探すより、事前に一度チェックしておく方が確実です。
お問い合わせはLINEが一番早いです。書類の確認から当日の対応方針まで、一緒に整理します。

