行政書士の横山輝明です。
「監査が来るとしたら運輸支局だろう」と思っている運送会社の経営者は少なくありません。でも実際は、労働基準監督署も運送会社への監査を行っています。2024年4月以降、「知らなかった」では済まされない場面が増えています。
私は水道工事・古紙回収・危険物輸送の現場で28年間働いてきました。当時の私は、「改善基準告示」という名前すら知りませんでした。ただ、眠い。疲れた。それでも荷物を届ける。それが当たり前でした。今はその「当たり前」が、刑事責任に直結する話になっています。
まずは、この2つの監査の違いから見ていきましょう。
目次
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監査に来るのは運輸支局だけではない
運送会社では、運輸支局による監査と、労働基準監督署による臨検監督は目的も確認事項も異なります。大きく2つの機関が担っています。
| 監査主体 | 所管 | 主な確認内容 |
|---|---|---|
| 運輸支局 | 国土交通省 | 点呼・乗務割当・安全教育・運転者台帳など運行管理全般 |
| 労働基準監督署 | 厚生労働省 | 労働時間・休日・36協定・時間外労働・賃金など労務管理全般 |
この2つは互いに情報連携しています。運輸支局の監査で改善基準告示違反が発覚すると、労働基準監督署に通報される仕組みになっています(相互通報制度)。片方をクリアしても、もう片方が来る可能性があります。
労働基準監督署の監査(臨検監督)とは
労働基準監督署の監査は「臨検監督」と呼ばれます。労働基準監督官が事業所に立ち入り、労働時間や賃金台帳、就業規則などを確認します。事業主や従業員への聞き取りも行われます。監督官には法律上の立入権・質問権があるため、原則として拒否することはできません。
臨検監督には主に4種類あります。
運送業は長時間労働・拘束時間・事故リスクが重なりやすい業種のため、他業種より監査が入りやすい傾向があります。
2024年4月以降、何が変わったか
2024年4月1日から、自動車運転業務にも時間外労働の上限規制(年960時間)が適用されました。
もっとも、改善基準告示そのものに刑事罰があるわけではありません。しかし、改善基準告示を守れない勤務実態は、時間外労働の上限規制や36協定違反など、労働基準法違反と評価されるリスクが高まりました。
| 項目 | 2024年3月まで | 2024年4月以降 |
|---|---|---|
| 時間外労働の上限 | 上限なし(適用除外) | 年960時間に制限 |
| 処分の性格 | 行政指導が中心 | 労基法違反と評価されるリスクが高まった |
| 責任を問われる対象 | 主に法人のみ | 法人だけでなく使用者や関係者が責任を問われる可能性 |
| 書類送検 | 例外的 | 悪質なケースでは積極的に送検 |
「事故を起こさなければ大丈夫」という考えは通用しなくなっています。改善基準告示を守れない勤務実態があれば、事故がなくても労基法違反と評価されるリスクがあります。
運輸支局の監査で違反が出た場合
運輸支局の監査では、違反内容の程度によって行政処分が決まります。
- 軽微な違反 → 指導・警告
- 中程度の違反 → 事業停止(〇日車など)
- 悪質な違反 → 事業許可の取消し
通常は行政処分ですが、違反内容によっては刑事事件へ発展する場合があります。また、運輸支局の監査で改善基準告示違反が発覚した場合は、相互通報制度により労働基準監督署へ通報され、臨検監督に移行することがあります。
労基署の監査で違反が出た場合
労基署の臨検監督で違反が認められた場合、行政処分ではなく「刑事処分」の流れになります。
まず是正勧告書または指導票が交付されます。期限内に是正して報告すれば、それ以上の処分に進むことはありません。
ただし、改善されない場合や違反内容が悪質・重大と判断された場合は書類送検になる可能性があります。労働基準法第119条に基づき、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が科されることがあります。
刑事責任につながる代表的な4つのルート
刑事責任に発展する経路は1つではありません。代表的な4つのルートを整理します。
事故が起きてから、あるいはドライバーに訴えられてから動いても遅い。これ以外にも状況によって別の経路が生じることがあります。
今すぐ確認すべき6つのポイント
改善基準告示の主な基準を整理します。これが守られているかどうかを、記録として確認できる状態にしておく必要があります。
✅ 現場経験28年チェックポイント
- 1日の拘束時間:15時間が限度
- 1ヶ月の拘束時間:284時間が限度(36協定あり310時間)
- 休息期間:勤務終了後に継続9時間以上
- 運転時間:2日平均で1日9時間以内、2週平均1週44時間以内
- 休日:休息期間9時間+24時間の継続33時間を下回らない
- 時間外労働:年960時間が限度(36協定要)
記録の整合性も重要です。運行記録計・運転日報・勤務表・点呼記録、これらが一致しているかどうかが監査で確認されます。書類が揃っていても、実態と合っていなければ意味がありません。
運行管理者だけでなく、経営者自身がこの数字を把握しているかどうかが問われる時代になっています。
まとめ
監査に来るのは運輸支局だけではありません。労働基準監督署も来ます。改善基準告示そのものに刑事罰があるわけではありませんが、それを守れない勤務実態は、労基法違反と評価されるリスクに直結しています。
対応の順番はシンプルです。まず基準を正しく理解する。次に記録を整える。運行記録計・運転日報・点呼記録・勤務表の整合性を日常的に確認しておくことが、監査が来ても慌てない体制につながります。
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