行政書士の横山輝明です。
古紙回収の仕事をしていたとき、毎月ヒヤリハットの報告書を書いていました。危険物輸送の現場でも同じで、「今月これが危なかった」「こう改善する」を一枚の紙にまとめて提出する。それが月に一度の決まりごとでした。
面倒だと思っていた時期があったのは事実です。でも今、行政書士として運送業の許可申請や巡回指導対策に関わるようになって、あの仕組みがいかに現場を守っていたかが、ようやくわかります。
この記事では、ヒヤリハットという考え方と、運送業許可・安全管理との関係を、現場経験28年の視点でお伝えします。
ヒヤリハットとは何か
ヒヤリハットとは、事故には至らなかったものの、あと一歩で危なかったと感じた出来事のことです。転びそうになった、接触しそうになった、誤った操作をしかけた。そういう「一歩手前」をすべて含みます。
この考え方の背景にあるのが、ハインリッヒの法則です。1件の重大事故の裏には29件の軽微な事故があり、その背後には300件のヒヤリハットが存在するという経験則です。事故は突然起きるのではなく、日常の小さな積み重ねの先にある。現場でそれを肌で感じてきた人間には、この考え方はすんなり入ってきます。
大事なのは、ヒヤリハットは「運よく何も起きなかった」話ではなく、「次に何かが起きる前の警告」だということです。
現場で見てきたヒヤリハット
古紙回収の現場では、毎月チームで集まってヒヤリハットを持ち寄りました。「先週の収集でこういう場面があった」「あの道は見通しが悪い」「荷台の積み方でこんな危険があった」。一人で抱えていると見えないことが、みんなで話すと浮かび上がってくる。そういう時間でした。
危険物輸送の現場は、さらに緊張感が違いました。一つのミスが取り返しのつかないことになる可能性があるため、ヒヤリハットの報告はより具体的で、改善策も細かく記録していました。「このときこういう状況で、こう対応した。次回はこうする」という形式で、毎月提出することになっていました。
面倒だと思っていた時期があったのは事実です。でも振り返ると、あの積み重ねが自分の運転の癖を直していたし、チームの安全意識を底上げしていました。強制的に書かせる仕組みがなければ、人はなかなか「危なかった」を言葉にしません。
運転中のヒヤリハットで多いのは、交差点・後退時・悪天候・長距離走行の4場面です。どれも「慣れ」が油断を生みやすいタイミングです。
運送業許可とヒヤリハットの関係
運送業の許可を取るには、運行管理者の選任や車両・営業所の要件など、さまざまな条件をクリアする必要があります。でも許可が下りた瞬間に終わりではありません。むしろそこからが本番です。
許可取得後の運送会社には、安全管理体制を継続して維持する義務があります。ドライバーへの指導・教育、点呼の実施、運行記録の管理。こうした日常業務の中に、ヒヤリハットの収集と共有は自然に組み込まれるべきものです。
許可申請では相談されても、取得後の安全管理まで意識される方は意外と多くありません。書類は整っているのに、現場の実態が伴っていない状態になりやすい。
ヒヤリハットの記録は、現場が実際に動いている証拠でもあります。「こういうことがあった」「こう対処した」という積み重ねが、安全管理の実態を示します。
✅ 現場経験28年チェックポイント
ヒヤリハットの報告書が一枚もない会社と、何年分も積み重なっている会社では、安全への向き合い方がまったく違います。提出用ではなく、自社の記録として残すことに意味があります。
巡回指導・監査でも問われる安全管理
運送業の許可を取った後、適正化事業実施機関による巡回指導や、運輸支局による監査が入ることがあります。そこで確認されるのは、書類の形式だけではありません。安全管理が現場で実際に機能しているかどうかが問われます。
点呼記録、運行指示書、教育記録。こうした書類が整っていることはもちろん大切です。ただ、それらの書類が「実態のある業務から生まれているか」という視点で見られることも少なくありません。
ヒヤリハットの記録は、安全管理への取り組みを示す資料の一つになります。定期的に収集・共有している記録があれば、安全管理への姿勢を具体的に示す材料になります。
逆に、安全管理の状況によっては、記録の不備が改善を求められる要因の一つとなる可能性があります。指導対象になってから慌てて整えようとしても、積み重ねのない書類は説得力を持ちません。
ヒヤリハット報告書を書くときのポイント
「何を書けばいいかわからない」という声をよく聞きます。難しく考える必要はありません。4つのことを書けば十分です。
毎月書き続けていると、自分の癖が見えてきます。同じ場面で同じ失敗をしかけているなら、そこに自分の運転の弱点があります。報告書は提出して終わりではなく、自分の運転を振り返るための記録でもあります。
まとめ
ヒヤリハットは、面倒な報告書を書かされる義務ではありません。現場で何が起きているかを言葉にして積み重ねていく作業です。
古紙回収でも、危険物輸送でも、毎月みんなで集まってヒヤリハットを話し合っていた時間が、今の自分の安全に対する考え方の土台になっています。運送業の許可を取った後も、その土台をどう作るかが、長く続けられる会社かどうかを分けます。
許可の取得から、取得後の安全管理体制の整備まで、ご相談はLINEからお気軽にどうぞ。
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